小堀鐸二研究所

非構造部材の耐震対策

非構造部材とは、柱、梁、床などの構造体ではなく、天井材や外壁(外装材)など、構造体と区分された部材です。非構造部材の被害は、構造体に被害が及ばない場合でも生じる可能性があります。なかでも天井の被害は、頭上への落下による直接的な人的被害が懸念されるため、地震対策はきわめて重要です。
南海トラフ地震や首都直下地震などの大地震の発生が想定される昨今、一層の安全性が求められる非構造部材の性能評価方法や耐震対策について開発をすすめています。

業務例

天井の挙動解析

天井の落下防止対策

フェールセーフ対応技術

その他の非構造部材の耐震対策


各非構造部材のフラジリティカーブの継続的検討


非構造部材(間仕切り壁)の地震被害とフラジリティカーブの例
非構造部材(間仕切り壁)の地震被害とフラジリティカーブの例

非構造部材は多種多様であり、その全てに対する実験による性能評価は現実的ではありません。破壊実験も行われていますが、限定された条件下で実施されたものであり、広く被害推定を行うにはデータが不足しています。

一方で、実際の地震被害では、建物を構成する各部材のうち、地震に抵抗する柱や梁、壁などの構造部材は無被害あるいは軽微な被害であっても、非構造部材には比較的大きな被害が見られる場合があります。これらの非構造部材の実地震時の被害と、別途計測している建物の揺れの大きさを結び付け、建物の揺れの大きさに従って非構造部材の被害確率を表したのが非構造部材のフラジリティカーブです。当社では、被害推定の精度を高めるため、今後も比較的軽微な被害を生じさせる地震も含めて非構造部材の地震被害と揺れの大きさを整理し、フラジリティカーブを継続的に更新していきます。

天井脱落対策に関するコンサルと及び落下防止ネット設計

天井落下防止ネットの施工例
天井落下防止ネットの施工例

近年の地震被害に鑑み、国交省は告示(※)により天井面高さ6m以上、面積200m2以上、質量2kg/m2以上の吊り天井(特定天井)について、地震に対する安全性の検証を求めています。
また、文科省では学校施設における屋内運動場等の天井等落下防止対策が指導されています。ここでは天井撤去を基本とし、必要がある場合には、補強、撤去+再設置、落下防止ネット等設置の方策が示されています。これらの方策のうち既存の天井の対策としては落下防止ネット等の設置が最も有力で現実的な選択肢と考えられます。

これまで落下防止ネットに対する構造計算はなく、その安全性が不明なまま施工された例も多くあります。当社では、国交省の指針に従った構造計算手順に基づいて、落下時の衝撃力に関する独自の算定式を導出するとともに、落下防止ネットの設計手順を構築・運用しています。

※国土交通省平成25年告示第771号:建築基準法施行令第39条に下記第3項追加
特定天井(脱落によつて重大な危害を生ずるおそれがあるものとして国土交通大臣が定める天井をいう。以下同じ。)の構造は、構造耐力上安全なものとして、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものとしなければならない。