新社長メッセージ
「Human Network(人的ネットワーク)」と「Adaptation(適応)」に基づいた
世界の建築・建築技術・建築文化への貢献
中島社長
 第二次世界大戦で焦土と化したわが国は、先輩達のたゆまぬ努力のおかげで奇跡的とも言える発展を遂げ、世界で最も繁栄を謳歌する国の一つとしての地位を確保するに至りました。しかしながら冷戦構造の終結以来、発展から成熟へと社会が移行し、また少子高齢社会がひたひたと迫り、さらに南海トラフの巨大地震や首都直下地震の襲来等、わが国の存続を脅かすほどの巨大災害への危惧も高まっています。一方地球規模で見れば、人口は急激に増え経済活動のグローバル化が進むなど、人類の持続的発展を地球規模で維持するために社会をどのように変革するかという究極の問題にも、私達は対峙しなければなりません。

 この問題に対して、人と住まいと生活に関わる社会の要請に応える生活空間を創り出すことを使命とする建築が果たす役割は多大です。ご承知のようにわが国の建築はその品質の高さを特徴とし、それを支える高い技術力が挙げられます。とりわけ多種多様な自然災害に見舞われるわが国が築き上げてきた「防災技術」は世界に誇れるものです。わが国の持続と成長を確実するために、これからわが国の建築は、他分野との一層の連携を通じて技術力に磨きをかけるとともに、産官学連携の強化等によってさらなる人材結集を図ってゆかねばなりません。

 国際連合は、2015年に「Sustainable Development Goals(SDGs)」において、地球の持続的発展のために解決すべき課題として、Poverty(貧困)から始まる17項目*1を挙げ、それぞれに複数のFacts(現状)と2030年までに果たすべきTargets(射程)を表しています。これら17項目のうち建築は、Infrastructure(社会基盤)、Cities(都市)を始めとして、多数の項目に大いに関連し、SDGsの実現に大きな役割を果たすことが期待されています。地球という舟の舵取りとしてわが国の建築が、その技術力を持ってSDGsに貢献するのは当然の義務であって、むしろ貢献への明確な姿勢こそが、わが国建築が今後めざすべき国際展開に新たな機運と機会をもたらします。

 私は、大学工学部建築学科を卒業した後、数年間を大学院生として米国で過ごし、帰国後は、建設省(現国土交通省)、国立大学、文部科学省、内閣府等さまざまな機関に籍を置きつつ、一貫して「地震防災」の研究開発に従事してまいりました。またその間継続して、地震防災に関する日米共同研究の運営、国際地震工学会の運営、耐震工学関連国際誌の編集を始めとして、海外研究者・技術者との交流と連携に努めてきました。これらの経験から、特に国際連携や展開においては、相手の技術や文化を読んでそれに配慮したうえで連携の中身を具体化する「適応(Adaptation)」というマインドが、その成就を握る最大の鍵であることを痛感しています。

 大学での定年退職を機に、わが国の建設実践を牽引する代表的な企業で働く幸運を得たことにより、今まで培ってきた国内外の「Human Network(人的ネットワーク)」のさらなる強化を通して、人類の持続的発展のための社会改革を建築の立場から「Adaptation(適応)」を基軸に推進し、わが国はもとより、世界の建築・建築技術・建築文化への貢献を率先するわが国建設業の具現に微力を尽くしたいと考えます。以上、社長就任に当たり、所信を述べさせていただきました。前社長同様、皆様のご指導・ご支援を賜りますよう、ここに謹んでお願い申し上げる次第です。

2017年6月
代表取締役社長 中島 正愛なかしま まさよし

京都大学 名誉教授
国際地震工学会 会長
米国工学アカデミー 外国人会員
(*1) 1) Poverty, 2) Hunger and Food Security, 3) Health, 4) Education, 5) Gender Equality and Women’s Employment, 6) Water and Sanitation, 7) Energy, 8) Economic Growth, 9) Infrastructure and Industrialization, 10) Inequality, 11) Cities, 12) Sustainable Consumption and Production, 13) Climate Change, 14) Oceans, 15) Biodiversity, Forests, and Desertification, 16) Peace, Justice, and Strong Institutions, 17) Partnership